「つながるためのサイン
さて、その彼が「新技」と呼んだのは、一人でいて孤立感や孤独感が強まり幻聴がきつくなったときに、「親指と小指を立てて電話をかける仕草をする」ということである。「一人でやっても効く」ところがポイントだ。それを彼は、リンリンサインと命名した。困ったときに仲間に電話するイメージを実感できるという。
ちなみに、その前に彼が開発したのはBB(ビッグ・ボス)サインといって、つらい幻聴や被害妄想をキャッチしたときに、親指を立てて仲間に伝える技である。それを見た仲間は「ナイスキャッチ」という励ましの意味をこめて、同様に親指を立てて連帯を表明する。その途端、塩がひくようにつらさが軽減するという。この二つのサインに共通しているのが「人とのつながり」を実感できることである。」
「苦労を取り戻す→自分を取り戻す→人とつながる」
精神障害をかかえるということは、浦賀流にいうと、「自分の苦労の主人公になる」チャンスを奪われるということである。これは、私が精神化冒頭の一スタッフとして仕事をはじめたときに最初に抱いた印象でもある。つまり、自分の人生でありながら常に他人に心配され、管理され、保護される暮らしの可能性が高まるのである。
特に統合失調症では、自分の五感から伝わってくる世界と、周囲の人間の共有している世界とのあいだに著しいギャップが巻き起こり、さまざまな人間関係上の摩擦を惹き起こす。摩擦を防ぐもっとも有効な手段は「人と会わない」ということである。そのことによって、当事者は人とのつながりからの離脱を余儀なくされ、さらに孤立へと陥る。ある当事者はそのときの心境を「どんなに嫌われもいいから、何をしてでも人とつながることを渇望した状態」といっている。
このようにしてできてしまった自分と周囲との間の溝を墓石、人とのつながりという命綱を確保する緊急避難的な事故対処として、彼らは爆発という手段に頼らざるを得なくなっていく。しかし爆発行為はさらなる周囲の管理と保護を強め、他社の管理と支配に身をゆだねる生活へと当事者を貶めていく。
それに対して「自分の苦労を取り戻す」とは、「自分の苦労が自分のものとなる」という経験であり、それは自分の人生を取り戻すことにほかならない。自分を取り戻してはじめて、人とちながることができる。このようにして、「苦労を取り戻す」ことと「人とつながる」ことが、同一の出来事としておきてくるのである。」
これまで読んだべてるの本で一番読み進めやすく感じています(まだ10ページほどだけど)。